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いつも早い帰りもあってか周辺に人はいない。
揺れる視線の奥で中年の男性が
女性のスカートをひっぱている。
「…。」
《…助ける…べき…だよな。》
俺は少し行く先を待とうとした自分を叱り
スマホから視線を外す。
男性のすぐ横まで歩いていく。
「!」
「……。」
女性はすぐに俺に気づいたようだ。
その潤んだ視線は俺に訴えている。
それと非常なまでに対照的なのが
痴漢をしている男性だ。
まるで俺の存在を無いものにしているように
女性の目の前のスカートに夢中だ。
まるで子どもだ。
「…すみません!」
「おぉ!?」
男性は俺に腕をつかまれてようやく俺に視線を向けた。
「…なんだよ、あんちゃん!?」
「彼女、明らかに…!!」
口を動かしていると一瞬視界が真っ暗に。
一歩、よろめいて下がると鼻から痛みが。
「ふん!」
男性はまたすぐに女性に痴漢をする。
《…有無…を言わずに殴ってきた!?》
俺はとりあえず鼻をぬぐって今度は両手を掴みにいった。
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