第一章

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 兄さん、ありがとう。  兄さんの車に乗せてもらえて、ホント、助かったよ。  料金所かサービスエリアを目指して歩いていたんだけれど、途中で急に雨が激しくなってきてね、困っていたところなんだよ。  子供も一緒だし……ずぶ濡れになっちまって、どうしようかと思ってたんだ。  お前もこの兄さんにお礼を言いな。  よしよし、いい子だな。  その人の邪魔になったら悪いから、もっと奥の方に座りなさい。それか、オレの膝の上に乗るか?  ……居眠り運転しそうだったから、ちょうど話し相手がほしかった? オレたちが話し相手になればいいけれどね。  でも、ホント、助かったよ。  オレ一人ならいいけれど、子供もいるからね、これ以上濡れたら風邪を引いちまうって、思っていたんだよ。   どうして夜中に、高速道路を歩いていたのかって?  夜中に子供連れが、路側帯を歩いているのを見てびっくりした?  そりゃ、確かに驚くよね。  トラックが故障したんだよ。エンジンがいかれちまってね。少し前からどうもエンジン音がおかしいなあ、とは思っていたんだよ。でも、雨が降ったり止んだりしていただろう? トラックを止めるに止められなくってさ、なんとか次のサービスエリアまでなら大丈夫だろうと、騙し騙し走っていたんだが、急にトラックが止まってしまってさ。  また、運悪く、携帯電話も故障しててね、どこにも連絡のしようがなくってさ。  ……えっ、高速の非常電話を使ったらよかったのにって?  確かに、非常電話はあったけどね、誰も電話に出なかったよ。  こんな真夜中だし、それに大雨だし、事故が多くて人手が足りないのかもしれないね。
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