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「天道…ちょっと」
ちょうどその時、寺河さんが戻り手招きした。
「は…はい」
俺はすぐさま立ち上がり、忍者のごとく素早く廊下へと出る。
「あ…の裕次郎兄貴は…」
「彼は近くの本屋へ行って、天道が終わるのを待っているそうだ。相変わらず本が好きで堪らないようだな」
『ふっ…』と柔らかく微笑み、俺の視線にゆるんだ表情を引き締める。
「あ…あ…あの…」
「天道が訊ねたいことは俺の推測でしかないが…裕次郎くんが天道と話すから『何も言うな』と、俺は釘を刺されている」
「裕次郎兄貴がぁ?」
寺河さんを尻に敷いているのか?
あの裕次郎兄貴が?
「と言うことだ。理解できたか?」
「はあ…裕次郎兄貴が寺河さんを尻に敷いているらしいってことッスよね?」
「なっ…!誰がそんなことを言っているのだ!」
寺河さんが突然声を大にしたことで、まわりの社員は嫌でも注目する。
その視線に気づき、寺河さんは気まずそうに姿勢をただす。
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