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二人で手にいっぱい持って、駐車場の裕典の車に積み込み乗り込んだ途端、裕典がボソリと呟いた。
「ここまで所帯染みてくるのか…」
「は?俺が?こんなのまだまだヒヨッコだって。チラシ片手に自転車で何キロも走って安い店をはしごする人もいるんだぞ」
「“母は強し”ってわかるわ…」
そんなことを話しているうちに我が家へと着き、またまた二人で荷物を家の中へと運び入れると、やっと裕典にいつものように座ってもらった。
「なあ…昨日、兄貴から電話があった。近々、恋人を連れて帰るってよ」
「…そうか」
夕飯の用意をしながら『やっぱりキタよ…』と予想していた話題に内心ドキドキしつつも、平静を装う。
「例のさ、俺が見た男なワケ?」
「裕次郎兄貴はなんて?」
「“恋人”ってしか言ってねえみたい。母さんは『嫁姑問題で興奮するわ』って早くも盛り上がってるけど…」
おばさんの喜びっぷりが目に浮かぶ。
「やっぱり、恋人って男なのか?」
「気になるなら自分で裕次郎兄貴に聞けよ」
そもそも話がそこまでいってるんだから、そっちの方が手っ取り早いだろ?
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