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有り合わせだけど夕飯を用意し、裕典と裕太郎にも食べてもらうと、二人は裕典の車で帰っていった。
「鍵閉めたぞ~」
見送りに出てくれた陽向が、玄関からそう言いながら戻ってきた。
「サンキュ♪風呂に入れよ」
「うん…」
陽向は返事はしつつも、浮かない顔で椅子を引き座った。
「現実を考えれば考えるほど…ハードル高いなあって思ってさ」
肘をテーブルにつき、まるで合掌しているかのように手を合わせて鼻と口を覆い、目を閉じると長い息を吐く。
「寺河さんと裕次郎兄貴の間は大丈夫だろうけど、俺だったら…みんなに祝福されたいな。特に家族にはさ…」
目を開き、ぼんやり焦点が合っていないまま、目の前の辺りを見ている。
「そう思ったら、『あ、うちはハル以外いないから楽だよな』なんてちょっと思っちまって…俺って最低だよ」
また目を閉じ、自己嫌悪感に悩まされてるようだ。
「なら、謝ってこいよ。風呂はそれからにしろ」
「そうする…母さんも父さんも許してくれるかな?」
心配そうに振り返り、見えない姉ちゃん達の方向を見る。
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