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『しかし、私にも私なりに覚悟があります』
寺河さんがまっすぐおじさんを見た。
『現段階で、私にはアメリカへ進出するテラカワフーズの仕事が任されることになっています。秋には今の会社を辞め、現地へ行きます。裕次郎くんに一緒に来てほしいとお願いしました』
『なっ…アメリカだと!?そ…んな勝手に…』
『ですが…私も寺河家の一員でいる場合の話です。私も家族に認めてもらえないなら、寺河を離れ、一個人として生きていく覚悟でいます』
そう言うと寺河さんは泣いている裕次郎兄貴にハンカチを差し出し手を握った。
『私は裕次郎くんを本当に愛しています。裕次郎くん以外に…何も要らないんです』
『て…寺河さ…』
裕次郎兄貴も泣きながら隣の寺河さんを見つめる。
『しかし、裕次郎くんにはこんなに素晴らしいご家族がいます。私は裕次郎くんにご家族と縁を切るなんて選択をさせたくありません』
それを聞いて、裕次郎兄貴はわんわんとハンカチを持ったまま両手で顔を覆い泣き出した。
寺河さんは優しく、そんな裕次郎兄貴の背中を撫でる。
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