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『この子は、私が人生でただ一人惚れた相手によく似て、のんびりとして頼りないだろうけど…』
ばあちゃんはじいちゃんを見てニヤリと笑う。
じいちゃんは恥ずかしそうに顔を両手で隠して照れている。
『裕次郎を…私の孫を頼んだよ。私が生きているうちは、私が取り除ける全ての岩を取り除いてやる。だから…裕次郎をよろしくお願いいたします』
じいちゃんとばあちゃんは両手をつき、深々と頭を下げた。
『お…じいさん、おばあさん…』
寺河さんは慌てて二人の方を向き頭を下げた。
『と、言うわけだ。恨むなら親である私を恨みな。間違っても矛先を、幸せを掴もうとしているこの子らに向けるんじゃないよ』
ばあちゃんはおじさんの方を見ずに言った。
『はあ…わかったわかった…好きにしろ。俺はもう何も言わない』
おじさんが手をワイパーのように振り、諦めたように寺河さんを見た。
『その子を…幸せにしてやって下さい。よろしくお願い致します』
おじさんとおばさんが頭を下げ、寺河さんを見た。
『私のような者に裕次郎くんを…ありがとうございます』
寺河さんは涙ぐみながらまた頭を下げた。
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