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それからしばらくして、裕典と裕太郎によると、寺河さんは裕次郎兄貴を実家に連れて行き、自分の両親や兄達に会わせたようだ――――
『そちらの方は、お仕事関係の方かしら?』
寺河さんに顔立ちが似ている母親は、綺麗に髪を結い上げ、高級そうな着物を自然に着こなし、表情をゆるめることなく裕次郎兄貴を見た。
『この人は、俺の恋人です』
『『『なんだって?』』』
父親や兄達は驚いた顔で寺河さんを見てから、再度裕次郎兄貴をまじまじと見た。
『確認するのもおかしいが、実は女性だったのか?』
『男性です』
全員が息を飲む。
『ふざけるのもいいかげんにしろ!確かに飛び抜けて綺麗だとは認める。だが、男を連れてくるとはどういうことだ!』
『先日の見合い相手も勝手に断ってしまって…あの後、どれだけ大変だったかわかっているのか!』
『言葉を返して申し訳ないが、それを言うなら、最初から兄さんが逃げることなく受けていればよかった話では?』
長兄は『ぐっ…』と言葉に詰まる。
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