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俺達が頭を悩ませたところでどうにもできないままな二・三日が過ぎた―――
「おはよう、天道」
「あ、寺河さん。おはようございます」
会社近くの駅の改札を抜けると、寺河さんが朝には似つかわしくない顔で立っていた。
「何かあったんスか?顔色が…」
「ああ…気にするな。少し寝不足なだけだ。天道に指摘されるほど顔に出ていたのか…気を付けなければな」
「あんまり、いいことではなさそうッスね」
「いいことではあるにはあるが…と言う微妙なところだ」
寺河さんは襟や袖など念入りにチェックしながら歩き出したので、俺も遅れまいとついていく。
「今…俺のマンションの、物置がわりに使用していた部屋やあちこちを片付けている。二人でな…」
「裕次郎兄貴…と?」
「ああ…一緒に住む予定だ」
言いながら照れているのか、ニヤケてしまったのか、いつもより口元がゆるんでいる。
「こんな同棲のような形ではなく、家族としてきちんとした関係になってからと思っていたのだが…」
そう言うと、寺河さんはあまり嬉しくなさそうな表情へと変わった。
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