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「まだ一緒に住みたくない…とか?」
「そんなことはない。俺は一日も早く一緒に住みたかった…だが、けじめとしてどちらかの籍へ入ってからと思っていたのだ。許してくれた彼のご家族のためにも、きちんとした形をとりたかった」
寺河さん、裕次郎兄貴とのことを真剣に考えてくれてたんだな。
そう思うと、俺としても嬉しいんだが、俺から見てそのくらいのことであんな顔をするのかと不思議でもある。
「きっかけが、裕次郎くんが………実家に直談判を続けているからなんだ」
俺の表情から読み取ったのか寺河さんは小さな声で呟いた。
「頑として『許してもらう』って聞かないんだ。頑固なところも嫌いではないんだが…さすがに毎晩となると体も心配だ」
「はあ…確かに」
「父や兄達に毎晩追い返されているようなんだ。『さすがに人目がありますから…』と母があの日初めて言いに来た」
“人目”も大事だろうけど、二人の気持ちだって大事なんじゃないかって俺は思うけどなあ。
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