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裕典はガンッと思いっきり両手でハンドルを叩いた。
「俺っちなんかと違って、真面目真面目で曲がったことも嫌いで、嘘なんてつけねえし…絶対義兄さんが初恋で…」
声がだんだんと震え、口を押さえ嗚咽を我慢している。
「裕典…」
「俺っちは、今までしてきたことが原因で、恋も思うようにいかない…けどそれは自分のせいだから…」
鼻をすすり、手で涙をぬぐいながら、しゃくりあげるような声が聞こえる。
「だけど…兄貴は何も悪いことしてない…ただ、好き合った相手が…男なだけ…それだけなのに…両想いなのに幸せに…なれないなんて…おかしい…」
「本当にな…なんでうまくいかないんだろうな…」
「兄貴が幸せになって欲しい…俺っちがバカやり過ぎたせいで、兄貴だからっていっぱい我慢したり…好きなこともできなかったこともあるはずだから…だから…もう思いっきり…自分を出したって…それくらいしたって…」
俺にはハンドルに突っ伏し、声を上げて泣く裕典の背中を、黙って撫でることしかできなかった。
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