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「俺だって…ハルから聞いて…でも何かしてやりたくても何もしてやれないから…」
しゅうぅんと声が小さくなる陽向に、裕典は『ふっ…』と嬉しそうな声を漏らす。
「陽向は昔から素直じゃねえけど、ずっと可愛いのな」
「は?ケンカ売ってるのか?」
「違う違う。はあ…だよな。何かしてやりたくても何もしてやれないのは俺も一緒だわ。今の俺には、兄貴達を助けたくても、持ってるスキルは何一つ役に立たねえ…」
窓を少し開け、重苦しい車内に夜風を入れる。
「裕次郎兄貴、せっかく自分家には認めてもらえたんだから割りきれる性格ならよかったんだけど」
「ハル…そりゃ無理だわ。あの兄貴はクソがつく真面目人間。男女の結婚のようにはいかねえけど、両家のことはきちんとしておきたいんだろ」
「それはわかるんだけどさ…自分達の幸せにのみ目を向けれる性格ならよかったなあって」
「ハル、その性格は裕次郎兄貴にはかなり難しい注文だよ」
そうなんだよなあ。
軽くないんだよ、天然だけど。
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