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その日帰ってきた陽向は…
悔し泣きしていたのか、目が真っ赤だった。
帰ると同時に風呂へ向かい、いろんなものを洗い流して来たようだ。
「今日は…来てくれて…ありがとう」
夕食の準備を終え待っていた俺を抱き締め、陽向は泣きそうな声で言った。
「気づいてたのか?」
「試合前に裕太郎がハルに言ったって。だから始まる直前にぐるっと見たら…いてくれてるのが見えた」
「おまえがちっとも言わねえから…知ってたら最初の試合から行ったのに」
陽向の性格からなんとなくわかるんだけどな。
「義兄さんと姉ちゃんも、ちゃんと見てくれてたぞ。きっと『自慢の息子だ』って言いまくってる」
「ふふふ…そう…かな?」
「ああ…後で聞いてこいよ」
俺はさらに腕に力を入れる陽向の背中をポンポンと叩く。
「陽向…お疲れさま。何年もよく頑張ったな」
「ぐっ…ハル…」
体を震わせ声を殺して泣く陽向の頭を撫でる。
「強豪の私立校にだって進めたのに…ごめんな」
「そんなの…俺は…今の学校で…よかった」
陽向は俺から離れ俺を見た。
「ハル…ありがとう」
義兄さん、姉ちゃん…
陽向はいい男に育ってくれたよ。
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