○今日からエロース?③○

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夕方――― 家の近くまで帰ってくると、我が家にぽうっと電気がついているのが見える。 テスト期間中だと、その期間だけだったからそんなに思わなかったが、今はこの光景だけでも少し切ない。 そう思っていると、玄関の戸が開き、ケンケン片足跳びをして靴を履きながら陽向が出てきた。 すぐ近くまで帰ってきている俺に気づくことなく、どこかに行くのか急いでいるようで、靴を履くことと鍵を締めることが一度になっている。 「あっ…もう、どこに…」 当然そんなだから鍵を落とし、慌てて屈んで探すものの、ジャラジャラしたキーホルダーを付けない派の性格が災いし、薄暗い中では見つけられないでいるようだ。 「ただいま。鍵、見つかったか?」 「あ…」 背後から声をかけた俺に驚いて振り向き、『あー、もう。間に合わなかったぁ…』と残念そうに項垂れる。 「迎えに行こうと思ってたのに…」 「じゃあ、駅まで戻るわ。早く鍵探せよ」 「なんで帰ってきたのに、意味もなく駅に戻るんだよ!」 いきなり立ち上がった陽向を笑い、玄関を開け懐中電灯を取る。
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