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昼休み―――
休憩室にどよめきが起こった。
『花見弁当か?』『お節料理より豪華ね…』とヒソヒソ話が聞こえる中、寺河さんは一番隅のテーブルにつき、淡々と紙皿と割り箸を俺と太中先輩に手渡した。
「残さず食べろ。命令だ」
テーブル一杯に並んだお重を見ているだけで胸が一杯だよ。
「いっただきま~す」
圧倒されている俺に反し、太中先輩は嬉しそうに次々と取っていく。
「うっめえな」
「当然だ」
寺河さんも静かに手を合わせ、ゆっくり食べ始める。
俺も遅れまいと急いで食べ始めた。
確かに美味い!
「すごく美味しいッスね。味も濃すぎず薄すぎず」
「言っておく。喜ぶだろう」
寺河さんは誇らしげに頷く。
「つくづく、相手がおまえで勿体無いな」
「うるさい!黙って食べろ」
「完食できるのか?かなりあるのに」
「“完食”の意味がおまえにもわかるだろう?」
そう言われちゃうと俺も椅子に座り直す。
「太中先輩、完食ッスよ」
「天道まで…」
「残ったら報告ッス」
俺達はかなりの用量の弁当を時間内になんとか食べ尽くした。
喜ぶ顔が見たいだろ?
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