○今日からエロース?③○

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我が道を好きなように歩く裕典に戸惑っている寺河さんを見て、太中先輩は横を向いて必死に笑いを堪えている。 同じ兄弟でも“また違う”と改めて痛感中のようだ。 「とにかく、おまえちょっと来い!お昼先に食べちゃってて下さい」 俺はそれだけを言い残し、裕典を引き摺るように会社から連れ出す。 「会社まで何しに来たんだよ?」 歩きながら訊ねてみる。 「ユッコちゃんの顔を…俺はハルに彼女を呼んでもらおうって」 「それなら時間をちゃんと決めておけよな…武内さん、夕方だと思ってるぞ」 俺が言ったことに『あ、そう言えば…』って、遅いんだって。 「でもいいじゃん、顔見るだけだし」 「良くねえよ!裕典が彼女に会うためにこんな格好までしてきてるように…」 俺は立ち止まり、無駄に似合いすぎる裕典のスーツの襟を直す。 「武内さんだって、それなりの気合いを入れてるんだよ…わかるか?」 裕典はキョトンと目を丸くしてから首を傾げる。 「だからさ、“つもり”ってあるだろ?彼女は夕方だって思ってんだから、連絡してちゃんと時間と場所決める!OK?」 まだ首を傾げていたが、俺は『わかったな!』とそれだけ言うと裕典と別れた。 激しく動いたから、弁当を見るのが怖い…
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