○今日からエロース?③○

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夕方――― ゆるんでいるが強張った表情の武内さんと、たまたまエレベーターの前で一緒になった。 「ねえ、お昼にアイツ、ここに来たの?」 武内さんが小声で聞くから、俺も黙って頷いた。 「アイツから連絡あった?」 「あるにはあったけど…『天道くんの友達が来てたけど、かなりのイケメンだった!』ってバカな女達が騒いでたから……たぶんそうかなって」 「“イケメン”は認めてるんだ」 「顔だけはいいからね。私のタイプとはまた違うけど」 エレベーターがやって来て乗り込むと、『ふぅ…』と息を吐いた。 「メイク…ちょっと直した」 「だよね、朝よりいい感じ」 「意地悪な言い方するわよね…」 武内さんは俺を見上げる。 「なんでだろ…それでも全然ショックじゃないの」 「ごめんね、俺も無神経だから」 武内さんはフルフルと首を振る。 「自分でもよくわからないから……今は正直、いろんなことに困惑してる」 「そっか」 「だからって、私の気持ちはそう簡単には変わらないんだから」 『じゃあね♪』と手を振り、どこかスッキリした顔の武内さんは、勇ましく先に歩いて行った。
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