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俺は二人にガン見されたまま、しばらくよくわからない沈黙が続いた。
「だぁーっ!誰か何か喋れよ!!」
そんな沈黙をぶち破っていきなり裕典が入ってきたから、俺達は飛び上がるくらい驚いた。
「兄貴、盗聴してたのか!」
「聞き耳をたててただけだ!」
裕典は噛み付きそうな勢いで裕太郎に言うと、陽向の頭をペシリと叩いた。
「いっつ…何を…」
「おまえもダンマリ地蔵か!!何か言えよ!」
「誰がダンマリ地蔵だ!!」
「わっかんないかなあ~…。今のハルのセリフ。もう一回聞いてみる?」
裕典はチョチョイノチョイと瞬時に操作し、いきなり動画を再生した。
『ウジウジ迷ってる陽向はらしくねえの。惚れるもんも惚れられねえな』
「裕典、隠し撮りしてやがったのか」
「は?“壁に耳あり障子になんとか”だ。ちょっと隙間開けてだな、戸に挟んで…」
「ちょっと待て!今ので俺が何をわかってないって言うんだ」
陽向が立ち上がり、裕典の肩を掴むと壁へと熱烈に押し付けた。
「陽向に壁ドンされちゃった♪」
「だ~か~らぁ~」
裕典が『きゃはっ♪』なんて緩く握った握り拳を自分の両頬にあてる。
陽向のイライラが背中からも十分に伝わってくる。
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