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俺は何気なく言ったつもりだったが、陽向はいきなり黙って立ち去ると、そのまま座敷に入り締め切ってしまった。
「あり?クサかったかな?それとも……重たかったとか?ウザさ再びか?」
心配になり座敷の前をウロウロしてみた。
だって、陽向のことだから、中では絶対何もつけてないはず。
「暑いだろ……熱中症になっちまったらどうすんだよ?」
陽向の健康管理は俺の役目のひとつだと思っているからな。
声を掛けようか迷い、戸に張り付き中の様子を窺った。
中からは微かに、陽向が姉ちゃんと義兄さんに小声で話し掛けてる声が聞こえる。
内容はどうやら、『これ以上、甘えていいのかな?』っぽい。
「はあ……家族なんだから、もっと甘えればいいのに。姉ちゃんと義兄さん、うまいこと言ってやってよ。甘えろって」
そう呟きながらも、甘えてもらいたがってる自分がおかしい気もする。
「だけど、俺だって少しでも力になりたいんだよ。頑張ってる陽向の為に、今の俺じゃこんなことしかできねえから。ごめんな……」
そっと座敷から離れ待つことにした。
「しばらく昼食代抑えるか」
べつに苦にも思わねえわ。
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