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なんとも言えないでいる俺に、陽向は『一緒だってさ』と照れ臭そうに微笑んだ。
「俺も裕太郎も、この夏が勝負だろ。おばさんは昨日までよりずっといい環境になるなら、願ったりだって……ハルと一緒だってさ」
「俺と?」
「応援してくれてる」
ゆるむ口元を引き締め、無理に表情を作ろうとしているから、俺の方が可笑しくて笑いそうになるのを堪えるのが大変だ。
「けど、俺もおばさんも応援しかできない。最後は自分達でどうにかしないとな」
「わかってる……後悔しないようにな」
陽向が身を屈め……
俺に頬を擦り寄せた。
「ありがと……ハル…」
「え?」
「いつも……ありがとう。実の兄弟でも甥っ子でもないのに、ハルはきっと誰よりも俺のことを考え、思ってくれてる」
頬から伝わる体温が熱い。
「裕太郎にそう言われた。たまにはきちんと礼を言っとけよって」
「ならまず座って、顔を見てきちっとだな……」
「それができたら……苦労するか!だいたい、こんな恥ずかしいことを言うこと自体がキツいのに」
陽向はそれだけ言うと、俺の目を手で塞ぎ、『こっち見るな!』と部屋から出ていった。
何年経っても、素直じゃなくて可愛いのな。
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