6569人が本棚に入れています
本棚に追加
/1932ページ
「はい」
振り返ると、60~70歳くらいの白髪混じりで品の良いスーツ姿の男性が立っていた。
「突然申し訳ありません」
深々と頭を下げるこの人のことは、どうも覚えがない。
ただ眼鏡の奥の瞳は、戸惑った光を宿しているようにも見えるが、強い意志さえも感じる。
「私は玉木義彦と申します。畏れ入りますが、少しお時間をいただきたいのですが…」
「えっ?いや…あの……申し訳ありませんが、今から来客がありますので……」
(初対面でいきなり時間が欲しいなんて何だよ?宗教かセールスじゃねえだろうな?)
俺が警戒しているのを感じたのか『それなら問題ありません』と玉木さんは苦笑する。
「来客とは、中学生の少年……ですよね?」
「えっ……ああ……はい……」
なんだ、この人……何で知ってる?
もしや、俺が中学生の……しかも男子と良からぬことをすると思い、取り締まりに来た、実は警察関係の人だったりするのか?
それとも、こんな人のいい顔をしてるけど、実はもっとややこしく、少年を使った美人局的な?
まさかなあ。
最初のコメントを投稿しよう!