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「あの……お父さんと夏姫さんはもうすぐ帰られるのか?」
玉木さんはリビングのソファに腰掛けると、隣に座る陽向に訊ねた。
「えっ…父さんと母さんは……」
悲しい表情で口ごもる陽向より先に、俺は玉木さんを『こちらへ……』と促した。
陽向に言わせてやりたくない気持ちが、頭で考えるより先にそうさせていたのかもしれない。
玉木さんを仏壇の前に案内すると、玉木さんは声を失い座り込んだ。
「そ…んな……幸治くん…夏姫さ…」
「陽向が小学4年の年末、結婚して約半年後……海外出張中に事故に遭いました」
「なっ…あの年に?結婚すると二人で挨拶に来てくれました。結婚後にはハガキまで送っていただいて……年末に私と妻が相次いで入院してしまった年だったので……」
玉木さんは這うように仏壇に近づく。
「年賀状がなくても、もう縁を切りたいのだろうと勝手に思い込んでました……この二人が、そんな人間ではないとわかっていたのに、自分達のことで精一杯だった……すまない…幸治君……夏姫さん、許して下さい…」
声をあげ玉木さんは仏壇に向かい泣きながら謝っていた。
玉木さんは我が家へやって来て、初めて姉ちゃんと義兄さんのことを知った……
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