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「それなら陽向は?陽向は今まで……」
玉木さんはハッと何かに気づいたように顔を上げた。
「俺は父さんや母さんがいなくなってから、ずっとハルと二人暮らしだよ。ハルが俺を育ててくれたんだ」
陽向がやって来て玉木さんの横に座り俺を見て言った。
玉木さんも驚いたように俺を見る。
「天道さん、あなたは夏姫さんの弟さんでしたよね?」
「はい」
「失礼ですが、おいくつですか?」
「今年、25歳になります」
さらに驚いたのか、玉木さんの目は大きく見開かれた。
「そ……それでは、高校生の頃から陽向を一人で?」
「俺一人じゃないです。ここにいる陽向の友人の裕太郎が、俺の目の届かないところでも陽向を支えてくれていました」
裕太郎は恥ずかしそうに顔を振り、はにかむように笑う。
「そして裕太郎の家族が、陽向を預かってくれたこともあります。俺一人の力でなんてとても……地域の人達を含め、本当にたくさんの人達が、影になり日向になりながら俺達を助けてくれたおかげです」
玉木さんは『そうでしたか…』と涙を流しながら、何度も俺に礼を言った。
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