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「幸治くんと別れたおよそ一年後、おまえの母親が男の子を産んだ。父親は誰かは知らないが、幸治くんの子どもではない」
「じゃあ……もしかしてあの子が?」
玉木さんはこくりと頷く。
「ああ…陽向の父親違いの弟だ……名前は陽向の陽に都で…陽都(あきと)」
陽向はまだ信じられないのか、呆然としたままだ。
「父親を知らない陽都が、ある時『どんなお父さんだった?』と聞いてきたそうです。常々不憫に思っていた妻が、つい幸治くんの名前と陽向のことを……だから陽都は、父親と兄に会いたくて…」
「それで何度も……」
やっと理由がわかった。
あの少年の切ない想いが。
だが……
「どうせあの女が勝手に産んで、面倒だからおじいちゃん達に押し付けて出ていったんだろ?」
陽向が低い怒りのこもった声で言った。
「弟だって?やめてよ……どこの誰だかわからないロクでもない男とあんな女との血が繋がった兄弟なんて……俺はゴメンだよ」
「ひ……なた…」
玉木さんは震える目で陽向を見る。
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