6569人が本棚に入れています
本棚に追加
/1932ページ
「おじいちゃん、俺は天道陽向だ!俺の家はここだけなんだ。俺の母さんの名前は夏姫……他は要らない」
陽向は立ち上がると、二階へ駆け上がってしまった。
困惑している俺に、裕太郎が『大丈夫だから』と声をかけ後を追ってくれた。
玉木さんはガクガク体を震わせると、ボロボロ涙を流し項垂れた。
「やはり来るんではなかった……来てはいけなかった……」
「そんなことありませんっ!」
俺は玉木さんの傍へと寄った。
「陽向、玉木さんが来てくれて喜んでたじゃないですか」
「あの子にとって、私達は思い出したくなかった存在だったはずです。消したい過去だったかもしれない……」
グッと手を握り締め目を覆う。
「あの子の母親は…私の娘は男に走り借金を作った挙げ句、まだ幼い陽向に暴力を……」
「……っ」
「おかしいと思っていたんです。陽向に最後に会ったのは、陽向が2つか3つの頃……なのに、私を覚え認識できていた。あの子の記憶力から考えれば、覚えていないはずがない……娘から受けた理不尽な暴力を……」
最初のコメントを投稿しよう!