6569人が本棚に入れています
本棚に追加
/1932ページ
あれから―――
俺は家から少し先まで玉木さんを送り別れた。
帰り際に下から声をかけたが、裕太郎だけが階段の上にやって来て首を左右に振り、俺達に手を合わせ『ごめんなさい』と口を動かした。
玉木さんは悲しそうな目をしたが、そんな裕太郎に礼を言い、陽向のことを頼んでいた。
「陽向のまわりには、あなたを含めいい人ばかり……陽向は天道家にやって来てからの方が、人に恵まれているんですね」
安心したように目を細める玉木さんに、俺はどう言っていいかわからず作り笑いを浮かべる。
「思い出させてしまったんでしょうね……やはり、二度と会わないままでいればよかった」
そう言って帰って行った玉木さんの悲しい目が痛かった。
「よぉっ!あの隠し子来たか?」
そのままフラフラと家へと俯き加減で歩いていた俺の前に、裕太郎を迎えにきたらしい裕典が気合いの抜けそうな声を出し現れた。
「どうしたどうした?シケた面だねえ~。あぁ?ん~~?」
顔を上げた俺を見て、一瞬首を少し傾げたが、
「…………何があったよ?」
すぐさま、いつものチャラけた裕典の表情が真剣な表情に変わった。
最初のコメントを投稿しよう!