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家に帰ると―――
ちょうど二人が階段を降りてくるところだった。
陽向は色々ショックだったようで元気がない。
少し泣いていたのか、目のまわりも擦ったように赤くなっている。
「ほんじゃま……飯でも食いに行きますか?」
いきなり裕典が『おら、行くぞ』と俺達へ腕を伸ばし、意外にしなやかな指でクイクイと招く。
「いいよ……行きたくねえ…」
当然、今の陽向は食欲なんてわかないようで、ムッと唇を尖らせプイッと顔を背ける。
「そう言うなって。俺っちがご馳走してやっから、受験生達。精つけて勉強に励め励め。ほら、ハルも貴重品忘れんなよ」
「いや、それなら俺が……」
言いかけた俺を裕典の目が制止させた。
「ま……いっか。取ってくる」
「ハルっ……」
陽向は裕典に従う俺に、拒否の意思を伝えようとしたようだが、裕典・裕太郎兄弟に『まあまあ…』『そうそう…』と背中を押され、裕典に無理矢理外へと連れ出されて行った。
「裕太郎、今日は悪かったな」
台所に置いてあった自分のリュックを背負おうとしている裕太郎に、俺は礼を言った。
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