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次の日の朝―――
陽都くんは帰る前に、陽向と仏壇の前に行き手を合わせた。
「父さん、母さん……陽都を送ってくるよ。またこっちに来るから。見守っててやってよ」
陽向はそう言って二人が写る写真に微笑む。
「見守っててくれる?」
「大丈夫だ。特に母さんは強いし優しいから。従兄のアイツが何かしようものなら、夜中に夢枕に立って関節技かけてるかも」
二人で吹き出し、陽都くんは『お願いします』と再び手を合わせた。
そんな陽都くんを、陽向は寂しそうな目で見つめている。
心配事だらけで不安もあるんだろう。
「おはよう!陽都くん、行ける?」
玄関が開き、裕太郎の声が聞こえた。
裕典が今回も連れて行ってくれるんだ。
「あの……いって……きます…」
陽都くんは恥ずかしそうに小さな声で仏壇に向かって声を掛け、ゆっくり立ち上がろうとした。
「えっ……」
突然、ハッとしたように陽都くんは顔を上げ前を見る。
「今、『いってらっしゃい』って……気のせいかな?」
「さあ……どうだろうな」
陽向は『くくくっ…』と笑い、仏壇に向かって『ありがとう』と言うと、陽都くんの背を押し前に進んだ。
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