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「あう~……疲れた……」
ドッと疲れ崩れた表情の太中先輩が、フラフラと自分の席へと戻ってきた。
「俺は出世レースと無縁でいたい人間だってのに……もう、さっさと離脱してえ…」
ゴンと机に額をぶつけ、熊のような唸り声を出す。
「あれしきのことで……情けない……」
太中先輩の背後で、寺河さんは額を指で押さえ『はあぁぁぁ……』と頭を振る。
「何年も前の過去の実績から遡らないといけないのかよ……」
「傾向と対策を……いや、語るだけで疲れる。早い話が、今知っておかねば、これから太中が困るだろうと思い、親切で部下思いの俺からの、ささやかな置き土産だ」
「お……置き土産」
太中先輩の顔は『嬉しくねえ~』と語っている。
「それにな、やはりある程度の地位についておかないと……」
そう言って寺河さんは太中先輩の耳元へと顔を寄せ何かを囁く。
「……って、やっぱそうなのか?」
「おまえが脛をかじるのはおかしいだろ?」
太中先輩はコクコク頷く。
「よしっ!昼飯食ったらまた頑張ろ~」
俄然やる気が出た太中先輩を見ると、寺河さんは俺を見てニヤリと笑った。
だいたい、想像がつくよ。
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