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二人きりにする多少の不安を感じなくもなかったが、裕次郎兄貴は『じゃあ、あとでね』とはにかむように微笑むと、先を歩く寺河さんを追って行ってしまった。
「天道が資料室行ってすぐ、受付から天道に客だって入ったんだ。俺はてっきり陽向くんだと思って『来てもらって』って言っちゃったんだわ。いないからって勝手に悪かったな」
「そんな、いいッスよ」
申し訳なさそうに謝ってくれる太中先輩に、俺が申し訳ないよ。
「それにしても、透明感ハンパないえらく綺麗な顔した人がやって来て焦った。『しばしお待ちを!』って斜めに飛び出してたわ。でも落ち着いた見た目より、なんだか中身がハムスタークラスの小動物みたいだな…彼、友達?」
「太中先輩の義理のお兄さんになる……かもしれない人ッスよ」
歩き始めた俺の背中に、やっと誰かわかった太中先輩の断末魔…もとい驚きの声がフロアに響いた。
太中先輩が“えらく綺麗な人”認識しただけあって、席に戻ると女性社員さま達が心なしか色めき立っている。
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