たとえばこんな家族愛

○今日からエロース？③○

善は急げと言うか、行動が早いって言うのかな？

基本的に綺麗好きで物が少ない寺河さん家は二晩あれば片付き、もうこの土日の休みに裕次郎兄貴の引っ越しって言うんだから…

『裕次郎くんとの生活に必要な物さえあればいい』

って、余計なものをあっさり処分できる性格が羨ましい。

俺は元来“捨てられない”派だから、陽向がいなかったら、我が家はたぶん物だらけになっているだろう。

「兄貴！いいかげんにしろよな」

「やだ！これは捨てない！」

そして今、やっぱり“捨てられない”派の裕次郎兄貴が、山のような段ボールと一緒に籠城中。

この土曜日、引っ越し用に会社から２トントラックを借りてきた裕典が、さっきからイライラしながら扉を揺すっている。

「運べる物から運ぶしかないよ」

裕太郎は呆れたように陽向に声をかけ、衣装ケースなど再び運び始めた。

「おっしゃ、食器もＯＫ」

キッチンで食器類を新聞紙にくるみ段ボールへと収納すると、俺は箱の蓋を閉じ、マジックで“食器”“われもの”と書きながら声をかけた。