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9月―――
寺河さんから太中先輩へ引き継ぎの為……
早い話が“教育”と言うか“しごき”が先日より開始されている。
太中先輩は、上に立つだけの力がある人で、今までがもったいない人材の一人だっただけなのだ。
ただ、太中先輩って“欲”があんまりない人なんだよ。
だから、本当なら能力が高くてもっと仕事が大好きな人や、地位や名誉に貪欲な人が出世していくんだろうけど、太中先輩にはそれがあまり当てはまらないないんだ。
仕事はできるのは確かなんだけどなあ……
「太中ぁ!」
ほら今日も、呆れたような声でありながらも、寺河さんからの迫力ある声が飛び出す。
それを聞き、『また始まった……』とばかりに、太中先輩は指を耳へ入れる。
「うるせえなあ……聞こえてるっつうの。この距離だぞ?この距離」
煩わしそうに目を細めたまま、自分と寺河さんの距離を視線で訴える。
『メートルにすらなってねえぞ』とボヤこうが、かえって寺河さんに『聞いてるのかぁ!』と返される始末。
部長は『実に良いコンビだ』と頷いているが、肝心の太中先輩は『コンビなんてやめて……』と嘆く。
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