第一話「勇者アランと平和な世界」

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 僕が勇者となり魔王討伐の命を受け、その使命を果たしてから三年の月日がたった。  僕は魔王を殺さず和解の道を選び、いろいろあったが今では人間、魔族、神族等様々な種族がまあまあ平和に暮らしている。  皆が望んだ世界、僕が望んだ世界だったはずなのに、僕は凄く退屈で勇者という称号は僕を縛り、個人としての活動は何もすることが出来なくなってしまった。  一年という長い期間を供に旅をしてきた仲間達は、それぞれ第二の人生を歩み始めているのに、僕は皆の好意で作られた勇者の家から、王様や魔王や神族からの許可が出なければ、外出すら許されないとても窮屈な生活をしている。  こんな生活を続けているせいか、書斎の窓から見える近くの森でさえとても遠くに感じてしまう。 「アラン様。入ってもよろしいですか?」  上質な木で出来た扉を二回ノックされた後に、僕の世話をしてくれているヤナの声が扉越しに耳に入る。 「入っていいよ」  僕の返事とともに、黒い生地のワンピースの上に白いフリルのついたエプロンを着たヤ
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