†夢から覚めた現実。

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「ま、まぁ。 チトセ君に免じて大人しくしといてあげる」 手を握られ安藤先輩は照れている。 「いつまで手を握っているのかしら?」 恨めしそうに美優ちゃんは二人を見ている。 「ごめんごめん」 ハッとして安藤先輩はチトセ君の手を離す。 「美優先輩、ごめんね」 うるうるした瞳でチトセ君は美優ちゃんを見てる。 この瞳は反則だ。 「べ、別に怒ってないのよ」 美優ちゃんはあたふたとする。 「愛のパワーは絶大だ」 小岩井先輩はしみじみと言う。 愛のパワー……ね。 さりげなくあたしは小岩井先輩を見てみる。 バッチリ小岩井先輩と目が合いウィンクされた。 小岩井先輩……。 いつからそんなキザなキャラになったの? 「結構クサクサですよ?」 美優ちゃんにズバッと突っ込まれる小岩井先輩。 「うるせー」 顔を真っ赤にして小岩井先輩は前へ進む。 手と足が一緒に出てますよ……。 「ははは!」 小岩井先輩の初(うぶ)な一面を見て何か微笑ましくなった。 「おやおや。 朝から賑やかですね。 おっと、私も早く行かねば!」 遠くに霞田先生の姿が見えた。 何か急いでいるみたいだからあえて声はかけないでおこう。 *** 「……心配して見に来たが大丈夫みたいだな、ゆずは」 一人の青年が赤ちゃんを抱いて木の陰から生徒達に見つからないように遥達を見ている。 「だぁだぁ!」 青年に抱かれたあかちゃんはニコニコ笑っている。 「ご機嫌みたいだね」 赤ちゃんを見て青年は微笑む。 「だ!」 スッと赤ちゃんは澄んだ青空を指さした。
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