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四月、桜の舞い散る季節。
出会いと別れ、始まりと終わり、学園生活の全ての交差点ともいえる月。
都立桜高校、そう刻まれた校門に一人の男が立っている。
「ここが、今日から俺が赴任する学校か」
年のころは30代半ば、背丈は目方180センチはある、大柄の部類に入るであろう男である。
面構えは良くもなく悪くもなく、しかし少しだけ刻まれたしわと、肉食獣を思わせるその目には、見るものを吸い込むような何かがあった。
男の名前は寺岡 芳樹、ガチホモである。
赴任初日ということもあってか、寺岡は正装のスーツに身を包んでいる。しかし、性に合わないとばかりにそれをほんの少し着崩している。
寺岡は新たなる教師生活に心を躍らせながら、廊下を歩いてゆく。すれちがう生徒たちは見覚えの無い寺岡に、「新しい教師か」「どんな人だろう」とさまざまな憶測に花を咲かせる。
そんな生徒たちを寺岡は横目で一瞬だけ見、歩き続ける。
「いい男の子たちが揃ってるじゃない・・・」
鋭い目を光らせ、寺岡はそう小声でつぶやいた。
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