始まりの音

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「あんた達!こんな日に遅刻なんて、何やってるのよ!」 エリンの怒声が耳に響く、その声に足を止めると俺達は潔く頭を下げた。 と、いうのも俺達が出場するのは4人1組の競技であり、この女子生徒エリンと同じチームなのである。 「エリンってば、そのくらいにしときなよ。もうすぐ点呼だよ?」 ひょっことエリンの背中の後ろから顔を出した女子生徒の声に俺達は目を輝かせる。 エリンは顔をしかめていたが、その女子生徒ケーティ・ローマンジャーの方を見ると溜息をついた。 「仕方ないわね、本当ケートは甘いんだから。早く行くわよ。」 エリンは踵を返すと速足で校舎の方へと戻っていった、残された俺達はケートへの助け船に感謝する。 「ケート、助かったよ・・・」 そんな俺達の謝礼に首をすくめ少し微笑んで見せると、彼女もエリンの方へと走って行った。 俺とアルはお互いに顔を見合わせると校舎の方へと歩いていく。 「今年のギルドは何処が有力なのかな?」 「うーん、やっぱりZaioncとさくらが良いみたいだけど、最近出来たStellaも来てるみたいだしね」 毎月ギルドにはランキングが付けられ、貢献度や戦闘力等で順位が決まる。 その中でもアルが言ったZaioncとさくらは俺達の祖父達の時代よりも長く続く伝統的なギルドで世界に通用する。 しかし、俺が気になっているのはStellaというギルドである。2週間ほど前の設立にも関わらずランキングは3位。 Zaionc、さくらと並ぶギルドであるという事だ。だが、Stellaの詳細は世間には漏れておらず、紋章やメンバーも不明という謎に包まれたままのギルドなのである。 「まぁ、そんな事よりも闘技大会を頑張らなくちゃな」 「あぁ、今度こそエリンの爆弾が落ちるよ」 そんなアルの言葉に俺達は苦笑いする。俺達の目的地であったロッカーにたどり着くと、今日必要な物を取り出した。 俺の右手には剣、左手には盾、この装備でおわかりだとは思うが俺は前衛だ。横を見るとアルが弓を背負っていた。
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