王子は常に引き連れて。

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 昔々、とある世界のとある所に、魔女さんと王子様がいた。 「魔女さま!僕は貴女のことが大好きですっ!」 「あーはいはい。まずは自分で雌の幼白竜の鱗と真祖の吸血鬼とその番いの血をセットで持ってきてから出直して来なー」  いつも王子様の告白はうまく魔女さんにかわされてばかり。  王子様は全く学習しない。言われた通りに素材を持ってきてはまた無理難題を押し付けられている。  けれど王子様は諦めることはない。例えその身を疾風の刃に裂かれても、例えその身を凍てつく炎に焼かれても。必ず求められたものを持ってきてまたアプローチ。  魔女さんも王子様の採ってきた素材を調合し、術を込め、錬成する。  ときには不治の病の特効薬を。ときには他種族の言葉を理解する薬を。  そうして結果として王子様の国と、それと関わった者たちは救われていく。  そして 「魔女さま!持ってきましたよ!メルンスト国の第七秘宝、グラバラスの涙から溢れる雫ひと瓶!」  今回もまた王子様は満面の笑みで敵国の秘宝から採れる素材を無事届ける。  あーはいはい、ありがと。と小瓶を受け取る魔女さんの態度はいつものように素っ気ない。  自分の努力が軽く扱われても王子様は笑顔を絶やさない。目をキラキラさせたまま、魔女さんが小瓶を持たない手に自分の手に添えて、 「魔女さま!僕と結婚してください!」
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