第1話 好きになんない!

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「な……んで、知ってるんですか?」  動揺してよろりと倒れそう。  神崎さんはつまらなそうな顔をする。 「うちの会社の人間なら誰でも知ってるでしょ。あれだけ目がハートになってたら。みんな“深愛ちゃんは若いなぁ、傷つかないといいなぁ”とか言ってるよ」  顔がバババっと赤くなった。  は、恥ずかしいっ。  みんなに知られていたなんて。  しかも明らかに、フラれる前提で憐れまれているじゃない! 「だから俺にしときなよ。俺なら今すぐそっこーで甘やかしてあげるけど?」  甘々フェイスでウィンクなんかしてやがる。  あげるって、その上から目線はなんですか!  恥ずかしいやら、情けないやらでテンパって、仕事中だっていうのに叫んでしまった。 「神崎さんなんて好きになんない! わたしは朝比奈社長にチョコを渡すんだから!」  わたしと神崎さん、やっちゃんに警備員さんだけがいる閑散としたロビーに思いの外、声が響いてしまった。  赤くなっていた顔が今度は青くなる。
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