第1話 好きになんない!

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 カウンターを整えてしばらくすると、正面玄関の大きなガラス扉が開いた。  本日第一号の社員さんのご出勤。 「「おはようございます」」  なんでかいつもハモっちゃうわたしとやっちゃん。  タイミングとか空気感が一緒なのかな。  それだけでちょっと嬉しいわたし達。  社員さんは、こちらにちらっと目線を向けたか向けないか、頭を下げたか下げないか。  ほとんど無反応に近い態度で目の前を通過していく。  まぁ、そんなもん。  ガラス窓で覆われた玄関ロビーは天井が高くて広くて明るい。  観葉植物がところどころにあしらわれ、待合用に置かれた白いソファも緩やかな曲線を描くデザイナーズ家具。  アロマポットからはシナモンの香りが漂って、その甘ったるい香りは会社だってことを忘れそう。  せっかく素敵なロビーだっていうのに、大概の人は足早に通過してエレベーターに吸い込まれていく。  そうしてそこに立つわたしはすげ替え可能なお飾りなんだ。
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