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その目には、軽蔑と落胆の色が見えた。
首からは、大量の赤い液体が、噴水の様に吹き出す。
「お前は本当に馬鹿だなあ」
刺した自分はそう言う。
「にっ……こっ……」
刺された自分は言葉を発そうとするが、息をするたびに喉から血が吹き出す。
「お帰り……」
刺した自分はそう言うと刺された自分の首を掴んだ。
「たっ……いま……」
刺された自分はそう返すと、息をしなくなった。
否、自ら止めた。
刺した自分は指に力を入れて、刺された自分の首を折った。
刺した自分の目からは、液体が垂れていく。
泣いていた。
激しく泣いていた。
自分たち兄弟は、どこから間違えてしまったのか。
そう思いながら。
双子の弟の亡骸を、腕の中でしっかりと抱きしめながら、兄はナイフを自分の首へと……。
ある日弟はおかしくなった。
弟が小学生の時、両親が死んだ。
自殺だった。
このとき弟はまだ“死”というものを知らなかった。
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