とある日。

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そこまで自分のことを、忘れられていたとは。 シャワーを止め、風呂場から出る。 バスタオルで身体を拭く。 下着を穿く。 服を着る。 そうして、洗面所を出る。 リビングに行くと、誰かがテレビを見ていた。 こちらがゆっくり近付いていく。 誰かもこちらに気が付き、振り向く。 顔はフードで見えない。 「誰だ?」 「……」 何も答えず、誰かはゆっくり近付いて来た。 誰かは、腕を振り上げる。 その手に握られている物が、蛍光灯の明かりを反射する。 自分は動くことも出来ず、何が首に刺さった。 力を振り絞り、誰かのフードを取る。 その顔は、自分だった。 「俺?」 自分は手を、刺した自分へと伸ばす。 その手は、弱々しく震えている。 刺した自分は刺された自分を見詰め、ニヤリと笑う。
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