留学生ピエール、働く

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店内はそこそこ賑わっている。 中に入ったピエールをまず驚かせたのは、自動ドアが開くと流れる、コンビニによくあるBGMだった。 普通なら音楽や効果音等が流れるのだが、何故か《コンビニYUKAWA》は 「幕の内ィー、弁当はー、コンビニゆーかーわァァァ♪」 という歌が流れたのだ。しかも拳がきいていて結構上手い。 ピエールが周囲を確認してみると、店内BGMに驚いているのは彼だけだった。 「いらっしゃいませー」 レジには無表情だがはっきりと聞こえる声を出す一人の女性がいた。 何故かその女性は猫耳フードの黒パーカーを着用していたが、関わったら面倒なことになりそうな人ではなかった。 「あのー、先日お電話させて頂いた者ですけど…」 控えめな声でレジにいる女性に話し掛けるピエール。女性はちらりと彼を見ると、こう言った。 「減点だな」 「ええええ!?ていうか何のですか!?」 「ここで働くにおいてその格好はないだろ」 ピエールの着ているスーツを見て、苦笑する。 「やっぱり高校生でスーツはませ過ぎですか?」 「ませ過ぎって言うより…ウチのコンセプトに合わないんだよ」 「コンセプト?」 「《ゆるく だるく 頼もしく》っていうコンセプトに」 「は、はあ…(ゆるくてだるくて頼もしいって一体…)」 ここでピエールはふと思った。 「この流れはひょっとして、自分はここで働く前提なのか?」と。
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