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「それより!私の手作りの店長エプロンを貶したらいくらあんちゃんでも怒るからねーっ」
「えっそれ赤澤さんの手作りなんですか!?」
驚くピエール。安藤に「はいはい、ダサいって言って悪かった」と頭を撫でられた赤澤は機嫌が良くなったのか、にこにこ笑っている。
「そうだよー。ていうか私のことは肉まんって呼んで?」
「いいですけど…何故肉まん?」
先程から赤澤は自分のことを肉まん肉まん言っているが、あだ名なのだろうかとピエールが考えていると、にこにこと表情を崩さず彼女は答えた。
「お店の方針なんだー」
「方針?」
「そう、方針。店長が決めたんだけどね、私達の店員は一人一人コンビニ商品にちなんだ名前があるの」
「はあ…」
「私は雰囲気がそれっぽいみたいだから肉まん。あんちゃんは名字から取ってあんまん。他にも色々あるよー」
「何だか…とても賑やかですね」
「だろ?私もあの店長の考えてることはよく分からないが、何か楽しそうだなと思ってね。ここで働くことにしたんだ」
「確かピエールくんも名前があったはずだよ。えーっと…何だっけー?」
「彼はピザまんだ」
「…いきなり喋るなよ店長」
「悪かった悪かった。ここは暖かくてのう、ついつい入ってしまうのじゃ」
「え…店長?どこに…」
確かに店長(らしい)のような初老の男性の声は聞こえるが、どこを探しても該当する人物はいない。
彼がキョロキョロ辺りを見渡していると、「あっいたー」と赤澤こと肉まんが声を上げた。
彼女が指さす先を見つめると、
「ちゅ、中華まん!?」
「む、ワシは中華まんではない。店長じゃ」
「いやだって…どう見ても中華まん…」
肉まんやら何やらが暖められているショーケースの上から三段目の左端に、エプロンのアップリケと同じ顔をした中華まん(のような店長)がいた。
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