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そのか細い願いも虚しく。
「はははっ」
悪魔か死神か、はたまた鬼のような奇声を上げた男は、包丁を振り上げた。
「やだっ!!やっ!!」
取り乱すあたしの頬は、涙と雨粒で溢れ返っている。
ブンッ!!
男は包丁で大きく円を宙に描き、左足をぬかるんだ地面に踏み入れた。
よけれた。
あたしは口を金魚のようにパクパク開けて、走ろうとした。
大丈夫、逃げれる。
そう信じて、あたしは腰を上げようとした。
「いたっ!!」
足に強烈な痛みが駆け抜け、尻餅をついてしまう。
唯一頼れる自分の足という希望が、あっさり砕け散った。
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