天の川

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痩せこけた男の無精髭の周りには、ヨダレや雨が垂れていて。 やだ。 気持ち悪い!! 殺されたくない。 殺されたくない!! バシャッ!! あたしは両手で水溜まりの泥水をなみなみすくい、男の顔にぶっかけた。 自分がものすごい形相なのが分かる。 頬の筋肉がひくひく動く。 「わ、くそっ……ぺっ、ぺっ!!」 口に泥が入ったのか、男は唾を水溜まりに飛ばした。 カランッ!! 天然の水滴が垂れてキラキラ光り輝く包丁の柄が、固い地面に落ちた。 電灯のみの薄暗いの中に、目立つ1つの光。 心拍数が高まる。 今だ。 今しかない。 あたしは地面に這いつくばり、包丁に向かって右手を勢いよく伸ばした。
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