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20歳の、7月7日。
風呂を保温せずに長々入り続ける時のぬるさは、この季節の気温に酷似してる。
ドン、と、天の川に咲く、黄色い花火。
蝉が、あちこちで輪唱してる。夜なのに。
夏の風物詩が、360度というあちこちから、こんにちはを告げる。
浴衣を着、長い茶色の髪をお団子に結わえたあたしはその夜空を見上げていた。
日焼け止めをふんだんに塗りたくった白い肌に、藍色の袖。
ピンク色の帯、低めの下駄には、赤い小さな花柄の鼻緒。
足の爪は手の爪と同様、磨いただけ。
昨日用意した一式は、正にこの日のための繕い物。
川から少し離れた暗い住宅街。
人はあたし以外いない。みんな七夕祭りという町内の祭りに出かけちゃったから。
ひっそり静まる住宅街のコンクリート道に、カランコロンと下駄を鳴らす。
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