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ナオさんの強い口調に圧されたのか否か、テツロウさんは呆れため息で、
「俺は単なる、スリリングな経験したいだけだ。
ナオとは違う」
そう無機質にサラリと言って、自分の黒いバイクに股がり、
「ナオ。今から俺が言うもの買ってこい」
と、早く行けと煽るように続けた。
「わかった。テツロウ、何を買えばいい?」
あたしは血の匂いを気にしながら、ナオさんの背後に回り、テツロウさんの言葉を待ちわびた。
テツロウさんは落ち着いた声で、
「スコップと軍手を人数分。それからじょうろ、朝顔の種一袋。
わかったか」
と、表情はわからないけど、ナオさんに二度伝えた。
「朝顔って、怪しまれないためのカモフラージュってこと?」
まばたきを繰り返し、身震いを感じながら聞くと、
「女、説明は後だ。お前はその血で汚れた浴衣と下駄を自分家まで帰って燃やせ。ナオに乗せてもらえ」
と、テツロウさんにより瞬間的に却下され、
彼は既に、もうバイクを走らせ、横道に消えていった。
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