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フラリと軽くよろけたところで、再び死体が視界の片隅に入る。
酸化し、赤から黒に変色してる男の目が、あたしを睨んでる風に思えた。
胃袋がうごめいてるのに気付いたあたしは、涙目で夜空を見上げた。
雨が上がってきた。
あたしが下駄のバランスに耐えながらカタカタ歯を鳴らしていると、ナオさんがそっと左肩を支えてくれた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫」
じゃないけど、ナオさんの心遣いの暖かさが左肩から伝わってきて、少し鼓動が静まった。
「さ、急ごうか、乗って!!」
青いヘルメットが視界を遮ったかと思えば、ナオさんがあたしの手を引いていた。
「これ着て。その浴衣じゃ捕まるでしょ」
ナオさんは自分が今まで着ていた灰色の半袖パーカーを、頭からバサリとかぶせてくれた。
「あ、ありがとう、でも血がついちゃったら……」
「いいから、さ」
ストライプ柄Tシャツいっちょうで微笑みかけてくれてる彼の体温で、汗で冷えた体がみるみる暖まってく。
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