天の川

37/68
前へ
/338ページ
次へ
靴箱からピンクのスニーカーを出し、サンダルのようにかかとを踏んで外に出た。 お帰り、という少年の笑みを投げ掛けてくれたナオさんとあたしで、新聞紙を半分ずつ分けた。 「火、つけるよ」 上目遣いにライターを見つめてからスイッチを入れたナオさんが、理科の実験が得意な男の子みたいだった。 ボウッと、新聞紙に火が付き、どんどん連鎖していく。 そして、浴衣と下駄に、静かに引火するのを見送る。 バチバチと耳障りな音と一緒に、灰の匂いを交えた熱い煙が宙を漂って。 日にち違いの送り火のように、暗闇に際どい赤が燃える。 浴衣は布だし下駄は木材だから、真っ黒に燃えてくれた。 めらめら揺れる熱気に、あたしもナオさんも顔をしかめた。 「君、名前は?」 茶髪を熱風にたなびかせ、足元で燃え盛る炎を見つめたまま、ナオさんはあたしの名を求めた。
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1688人が本棚に入れています
本棚に追加