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隣の彼に対し、あたしは唇を動かした。
「坂巻……瑠子」
サカマキ、ルコ。
ルリでもリコでもない、ルコ。
「ルコちゃん。いい名前だね」
ナオさんはその大きい目を見開いて笑ってくれたけど、あたしは笑える気分になれなくて。
それを察したのか、ナオさんは隣にいるあたしから視線をアパートに移し、
「ルコちゃん、火消さないと、さ。バケツある?」
とあっけらかんに言い、にこりとした。
あたしは前に友達と花火をした時に使ったバケツが、アパートの裏庭のようなスペースにあるのを記憶していた。
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